カプリチオシリーズ 運命(六曲屏風)

作品名:カプリチオシリーズ 運命(六曲屏風)
サイズ:182×438cm
2007年 墨・アクリル・油彩・金箔

第34回青枢展(於 東京都美術館)文部科学大臣賞受賞作品

『歌うように、奏でるように』
カプリオシリーズは画家のライフワークといってよい。自身の感情を画面に一気呵成にぶつけ、描き上げる。掲出の作品は、金地を施した六曲の画面に、宇宙を思わせる世界が展開している。
透明感のある青を空間に漂わせ、そこにしろや水色でドリッピングしていく。そこにさらに金箔を貼り、朱の落款をいくつも押していく。また、左下方には一際明るい金色が輝きを放っている。星々が輝き、流れ、ある場所では新しい星が爆発と共に誕生する。そういった、遠い世界の出来事に馳せるロマンが、この作品の世界観を作り出しているようだ。

歌うように、奏でるように描く番作品の妙は、即興から生まれてくるといってもよいだろう。イメージと偶然の融合をその瞬間瞬間で感じ取り、作品として纏め上げることのできる画家の技量には特に注目すべきである。そういったロマンチックな画家の内面が特に現れた作品だと思うし、鑑賞者もまた、作品世界へと画家と共に旅をするように入り込んでいく。

画家の激しくも繊細なイメージが描き出されている。金をバックにしながら、そこに宇宙空間を思わせる暗色或いはブルーが漂っている。さらにはその色彩に沿って、ドリッピングによって水色と白、黄色が施されていっている。また、所々に箔や落款がさらに貼られていて、画面全体で躍動感のあるリズムを作り出している。そうやって作品全体で一つの協奏曲を奏でるように、そして歌うように、画家は作品を描き出した。

作品の前に立っていると、深く瞑想するような、あるいは喜びや悲しみといった感情を引き寄せるようなイメージが、画面全体のあらゆるところで見え隠れしながら浮かび上がってくる。その様々な感情は、人生のいたる所にあるものであり、それは「運命」という言葉と自然と繋がっていく。そしてそれは、画家の人生そのものを作品に投影することでしか獲得できない。だからこそ得られる強い臨場感とリアリティなのである。

美術評論家 磯部靖

番の作品を貫く哲学は「カプリチオ」だ。
気まぐれで形式に捉われない狂想曲を指す。色彩と描線が爆発した本作は、まさに型に嵌らない自由を表現している。まるで本能が覚醒したかのようだ。
一方で、余白のバランスや絵筆のコントロールは計算し尽くされ、「気まぐれ」だけでは説明できない美意識がある。本作は六曲屏風だ。屏風は空間に応じて折り方を変え、自由に飾ることができる。設置の自由度と番の感情が二重奏を奏で、多彩な表情を見せてくれる作品だ。

 

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